海のサイエンスカフェ

日本海洋学会教育問題研究会



地球温暖化と海-水中の巨大な波,内部波のひみつ-

 

【参加者】 

    高校生(1名)、社会人(5名)、教育問題研究部会員(9名)

 

【進行担当者からのメッセージ】

 東京での開催は3回目、通算5回目の「海のサイエンスカフェ」であった。あいにくの悪天候と宣伝不足のせいか参加者は6名と不調であったが、その分家族的雰囲気で和やかに行われ、参加者には満足していただけたようであった。

●  進行について
 はじめに進行担当者の自己紹介に引き継いて、当日の進行スケジュール(11時から13時までの2時間)の概略説明を以下のように行った。1)海のサイエンスカフェの趣旨説明 2)話題提供者の紹介 3)中村さんによる「地球温暖化と海 -水中の巨大な波,内部波のひみつ-」の話し。4)質問。ここまでで一時間、小休止をはさんで午後の部 5)少人数にわかれ、スタッフを交えた懇談(話題に関する質問の他、海に関することなら何でも話題にして自由に懇談)。6)アンケート調査の協力依頼。7)終了。

●話題提供について
 話題に「内部波」という普段耳慣れない専門用語が用いられており、しかも話題提供者の中村さんと進行係が互いに遠隔地に住んでいるので、事前に直接会っての打ち合わせが出来なかった。また会場が喫茶店なのでプロジェクターや実験などが出来ない。このような不安要素があったので話題提供者の中村さんが話に苦労されるのではと懸念していた。ところがアンケートの結果は「だいたい理解できた、よく理解できた」との答えで安堵した。 中村さんの丁寧な解説をはじめ、カラーの手持ちパネル、配布資料、波乗りの玩具(透明な油を空気に見せかけ、青の色水との境界面に波がおきるようにさせたもの)など持ち込んだ工夫も功を奏したのであろう。 間に休憩時間を入れたのも良かったようだ。

●懇談の様子
 例年に比べ少し長い50分間の自由懇談の時間をとったのであるが、皆さん熱心でなごりおしいようすであった。当日の話題への質問を納得するまでし続ける方、このような機会にと他の話題に積極的に質問される方など多様であった。中には積極的に話題を出せないのでテーマを作って欲しいような方もいたようである。
 参加者は多様なので、今までのように数人ずつテーブルにわかれその中にスタッフが入って討論する形態はそのままで良いが、テーブルごとにコーナー名をつけ、例えば質問コーナー、テーマコーナー、進学コーナーなど、
 コーナー希望者数に応じて同名テーブルの数を加減することも試みたらよいのではないかと感じた。

 以上気がついた何点かを記したが、スタッフの協力、会場を提供していただいたルノアール品川店の協力などで成功裏に終わった。次回は参加者が増える努力が必要であろう。         

乙部弘隆

 

【話題提供者からのメッセージ】

 第5回「海のサイエンスカフェ」では「地球温暖化と海 -水中の巨大な波,内部波のひみつ-」というタイトルで話題を提供させて戴きました。当日は先ず、そもそも「内部波」とは何か、およびその伝播・生成のメカニズムの話から始まりました。水面の波(池に石を投げ込むと出来る波紋など)と比較したり、水族館などで売られている「波乗りのおもちゃ」で実演したりしながらの説明でした。その後、内部波の砕波について、世界で初めて大規模砕波を捉えた観測結果そして数値シミュレーションから作成したアニメーションを見て戴きました。葛飾北斎の冨嶽三十六景神奈川沖浪裏に描かれた砕ける波のような、しかしもっと大規模な砕波が海洋内部では生じているのです(観測された砕波は高さ約200mに達していました)。最後に、こうした砕波によって引き起こされる混合が、全球を巡る海水循環(熱塩循環)・物質循環・生態系ひいては気候の形成や地球温暖化を含む気候変動に重要な役割を果たしていることを説明して、長いストーリーが終了しました。

 一般の方に専門的な話をするのは初めてなのにもかかわらず(あるいは初めてだから)、皆さん聞いたこともないと思われる「内部波」についてメカニズムまで踏み込んで話すという野心的な内容でした。楽しんで戴けるのか戦々恐々の部分もありましたが、事後のアンケートによると皆さん概ねよく理解できたとのことで嬉しい限りです。参加して下さった方々の熱意、それからタイトルや話の進め方のアドバイスを戴いた須賀さんと乙部さんをはじめとする教育問題研究部会の方々の協力のおかげです。乙部さんには当日の準備からおもちゃの準備までして戴きました。

 話題提供の後はテーブルに分かれて参加者と学会員の方との懇談が行われました。各テーブルで話し込んでしまい、他の人とは余り話が出来なかったのが少し心残りでしたが、逆に言うとそれほど盛り上がっていました。

 最後になりましたが、ぐずついた天気の中を来て下さった参加者の皆様、場を提供して戴いた喫茶室ルノアール品川港南口店の皆様、そしてこのような機会を戴いた教育問題研究部会の皆様に感謝致します。

                                          中村知裕