海のサイエンスカフェ

日本海洋学会教育問題研究会



第7回海のサイエンスカフェ開催報告

 

日 時: 平成23年3月27日(日) 11時-13時
場 所: ルノアール品川港南口店
話 題: 東北関東大震災にかかわる海洋の科学を考える
参加者: 27名(教育問題研究会員8名、海洋学会員2名、一般17名)
進 行: 市川 洋

【話題提供】

「福島原発周辺海域モニタリング結果と海流状況」の解説 (市川 洋)
「沿岸-外洋域における放射性核種の挙動」の解説 (上野洋路)
「平塚沖海洋観測塔における津波記録」の紹介 (蓮沼啓一)

【趣 旨】

東北関東大震災と福島原子力発電所事故の発生を受けて、これらと海とのかかわりについて解説するとともに、海洋学研究に携わる者と一般の方々との間で、海洋学研究を含む科学研究や、海洋リテラシーを含む科学リテラシーの普及・教育活動の今後のあり方について意見交換を行う。海洋学会員と一般参加者が、今回の事態を契機に抱いた色々な思いを語り合い、ぶつけ合う場としたい。

【開催の経緯】

3月22日から26日に東京大学柏キャンパスで開催される日本海洋学会2011年度春季大会に合わせて、3月27日に「海の巨大な渦―海の中にも高気圧と低気圧がある―」という話題で「第7回海のサイエンスカフェ」を開催する予定で準備を進めていた。しかし、東日本大震災の発生とその後の情勢を受けて、海洋学会が中止となり、予定していた話題提供者と進行担当者の出席も難しい状況になった。このため、急遽、内容を「海洋学会員と一般参加者が、今回の東北関東大震災と福島原子力発電所事故の発生という事態を契機に抱いた色々な思いを語り合い、ぶつけ合う場」に変更して開催することとした。

【参加者】

最終的に内容が確定し、ウェブサイト他で告知したのは3月18日であった。それにもかかわらず、開催前日の26日午後には、教育問題研究会員を含めた参加事前申込み者が予定定員の25名に達するという、これまでにない大きな反響があった。結局、内容変更以前に申し込まれた方を含め、当日の参加者総数は27名であった。参加した8名の教育問題研究会員の中の3名は、支援者として参加するのが初めてであった。また、一般の海洋学会員2名が参加した。一般参加者(男性8名、女性9名)の職は、会社員、海洋調査会社員、エンジニア、科学コミュニケーター、図書館職員、小学校教諭、自営業、大学院学生などと多彩であった。また、年齢構成も、20歳台が5名、50歳台が4名、30歳台と40歳台が各3名、10歳台と60歳台が各1名と幅広く、家族(会社員夫妻と高校生)での参加もあった。研究者側にも、一般の方々にも、お互いに語り合いたいという強い欲求があったことを示しており、多くの方々の協力を得て、時期にかなった集まりを開催することが出来たといえる。

【進行】

11時からの趣旨と進行予定の説明の後、一般参加者は、今日のサイエンスカフェで語り合いたいことを含めた自己紹介を、研究会会員は各自の研究内容を含めた自己紹介を、各々、行った。
11時20分頃より、研究会会員3名が、東北沖大地震による津波および福島原子力発電所からの放射性物質による海洋汚染についての解説と質疑応答を行った。
11時50分から12時50分まで、各参加者の希望に沿って、福島原発事故(8名)、海洋科学(7名)、地震・津波(6名)、科学と社会(6名)の小グループに分かれて、海洋学会員と一般参加者が語り合った。その後、各小グループでの議論の内容を全体に紹介し、13時過ぎに終了した。
各小グループで話し合われた内容については以下のリンク先の概要を参照されたい。

1)福島原発事故グループの話題
2)海洋科学グループの話題
3)地震・津波グループの話題 
4)科学と社会グループの報告

【担当者からのメッセージ】

進行担当者としては、グループ分けに際して、参加者の希望が福島原発事故に大きく偏ることを危惧したが、参加者の関心の幅が広くて、適度に分散したことに驚いた。これまでの「海のサイエンスカフェ」での小グループ分けに際しては、参加者の各々の主要な関心事には特に配慮をしていなかった。参加された方々が、各々の想いをそれなりに語り合うためには、今回のように、参加者の主要関心事別に分けるのが良いように思った。各小グループでの議論の内容を全体で更に議論して、結果を共有する時間を確保できなかったのが、少々、残念ではあった。
終了時に回収したアンケートでは、一般参加者の多くから、配布された資料が興味深かった、最初の自己紹介、小グループによる対話、異なる年代の人と語り合えたことが良かった、研究者の中にも色々な考えの持ち主がいることが分かった、などの好意的な感想が寄せられていた。問題点としては、会場の問題(BGMなど)と研究会会員の説明の一部に理解できないところがあったというご指摘があった。一般喫茶店の一部を使うということには、BGMの調整、喫煙エリアとの分離、ネット放映、が難しい、という短所があるものの、会場費を必要とせず、普段着の気軽な会の雰囲気を確保できるという長所がある。短所の解消を優先するのか、長所を重視するのか、今後も柔軟に検討を続けたい。一般参加者の多くから、次回の開催案内の希望が伝えられたのが嬉しかった。この場を借りて、参加された皆様に御礼申し上げます。

文責:市川 洋