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海の水には何が入っているか 〜プランクトンを観察しよう〜

プランクトンってどんな生き物?

 プランクトンという言葉は、もともと水の中を漂うように生活している生き物すべてにつけられた名前です。ですから、特定の生き物をさす言葉ではありません。その中にはケンミジンコのような動物も、ツノモやハネケイソウのような植物も、また、細菌の仲間も含まれています。
 それらの多くは非常に小さく(数μm〜20mm程度)、水の中を泳ぐ力(遊泳能力)のないものが大部分です。でも、傘の直径が30cmを超えるミズクラゲやエチゼンクラゲ、エビやオキアミのこども(幼生)、そしてさまざまな魚のこども(稚魚)のようにわずかな遊泳力を持っているものや、一生のある時期(多くが子供の時期ですが)だけ浮遊してすごす仲間も含まれます。
  プランクトンのなかまは淡水にも、海水にも分布しています。淡水では身の回りにある小さな(コップくらいの大きさの)水たまりの中にも見つけられるし、海では波打ち際から、水深が1万メートルを超える超深海にも生活しているのです。

プランクトンをつかまえてみよう

  1. プランクトンをつかまえてみよう
      私たちが、ルーペや実体顕微鏡、生物顕微鏡を用いて、手軽に観察できる程度の大きさのプランクトンの採集は、プランクトンネットを用いた採集が一般的です。この大きさのプランクトンを採集するためには、普通目の大きさが約0.1mmのネットと約0.33mmのネットを用います。目の細かい方が植物プランクトン用で、大きい方が動物プランクトン用です。 プランクトンネットを作ってみよう
     また、プランクトンネットよりもさらに目の細かい、グラスファイバーフィルターと呼ばれる濾紙で、濾されたりして、採集されます。
  2. 水といっしょにつかまえてみよう
     植物プランクトン用の目の細かいネットでも採集できない(目を通り抜けてしまうほど小さい生き物)微小なプランクトンは、一般に採水器と呼ばれる、水を取るための装置で採取します。採水後、水の中で沈殿させたり、遠心分離器にかけられたりして一カ所に集められます。バケツでは、水面の水しか採集できませんが、採水器は、希望する深さの水だけを採集できます。

プランクトンを観察してみよう

  プランクトンのなかまには、体長が1.0mm以下の小さなものが多いので、これらを観察するには、ルーペや解剖顕微鏡では十分ではありません。一般的には、実体顕微鏡や生物顕微鏡、そして時には電子顕微鏡を使った観察が行われます。ここでは実体顕微鏡と生物顕微鏡を用いた、プランクトンの観察の仕方を解説しましょう。

顕微鏡で観察してみよう

I,実体顕微鏡で観察してみよう
 実体顕微鏡(図1)は、採集したプランクトンのなかまを水と一緒にそのままシャーレなどに移すだけで、簡単に、しかも、80倍くらいの大きさにまで拡大して観察することができでます。IIで紹介する生物鏡のように、プレパラートを作って観察する必要もありません。

実体顕微鏡
図1
 実体顕微鏡

<観察手順はこうだよ>
  ここでは、ニコンの実体顕微鏡 SMZ-10を例に解説します。

  1. 架台の上に生物試料を置きます。このとき、プランクトンや小さな水生生物は、シャーレなどに移し、試料が水(海水)に完全に浸るようにしてから、架台の上に置きます。
  2. クランプハンドルを緩めて、生物試料と実体顕微鏡のレンズの先端までの距離が7〜8cmになるようにセットし、クランプハンドルをしっかり締めましょう。
  3. 実体顕微鏡に透過照明架台のあるものは、照明装置の調光ダイヤル(スイッチ)を入れ、架台の中の反射板を調節して、光が架台の中から生物試料にうまく当たるようにします。透過照明架台のないものは、落射照明装置を用いて、生物試料の上から直接光が当たるようにします(⇒<照明にも気を配ろう>)。
  4. 接眼レンズのところについている、視度調節リングの目盛りを0(ゼロ)に合わせます。
  5. 接眼レンズをのぞき、視野が一つになるように、左右の接眼レンズを自分の両眼の幅にあわせます。
  6. ズームリングを回し、最高倍率にします。
  7. 焦準ハンドル(ピントを合わせるハンドル)を回転させてピントを合わせます。
  8. ズームリングを回して最低倍率にします。このときにピントがぼけていたら、左右の接眼レンズの視度調節リングを回してピントを合わせましょう。この時、焦準ハンドルを動かしてはいけません。
  9. もう一度、ズームリングを回して最高倍率にし、ピントが合っていることを確認して下さい。もし、ピントが合っていなかったら、6〜8を繰り返してみましょう。

照明にも気を配ろう
 実体顕微鏡がいくら良くても、照明方法が悪くては十分な観察ができません。いくつかの効果的な照明方法と照明を使う場合の注意点を紹介しておきます。

◆透過照明(透過照明架台のある顕微鏡用)

  1. 生物試料を架台の中央に置きます。
  2. 調光ダイヤルを回してスイッチを入れ、さらにダイヤルを回して光の強さを調節します。
  3. 架台の中の回転反射板(回転ミラー)のつまみを回し、低倍率で見るときには凹面鏡を、高倍率で見るときには平面鏡をつかいます。

◆落射照明(反射照明)

  1. 顕微鏡の近くに光源を置きます。
  2. 光を試料の色々な方向から当てて、いちばん観察しやすい角度、方向を選びます。場合によっては、生物試料の真横から光を当てるときれいに見えることもあります。
  3. 1と2を組み合わせれば、さらに効果的な観察が出来る場合があります。要は光の使い方。色々工夫して顕微鏡観察のエキスパートになろう!

<ここに注意しよう>
 照明装置が点灯している時は、ランプやランプハウス周辺はとても熱くなります。火傷には十分注意しよう。

II,生物顕微鏡で観察してみよう
 生物顕微鏡(図2)は、実体顕微鏡ではよく観察できない、より小さい部分やものを観察するのに用いられます。この顕微鏡で観察するためには、プレパラートを作らなければなりません。

<プレパラートの作り方はこうだよ>

  1. スポイト(ピペット)で、プランクトンの入っている水を取り、スライドグラスの上に1,2滴落とします。
  2. その上からカバーグラスを被せます(このとき空気の泡が入らないように注意しよう)。
  3. プレパラートの完成です。
生物顕微鏡
図2
 生物顕微鏡

<観察手順はこうだよ>
ここではニコンの生物顕微鏡SCを例に解説します。

  1. ステージの上に、いま作ったプレパラートをセットします。この時、メカニカルステージがついている顕微鏡なら、メカニカルステージにプレパラートの角がきちっと収まるように、プレパラートをセットします。
  2. レボルバーを回し、最低倍率の対物レンズをセット(実体顕微鏡での観察手順と違うよ。)
  3. ステージを見ながら、粗動ハンドルを回し、プレパラートに対物レンズを近づけます。
  4. 左の接眼レンズの視度調節リングの目盛りを0(ゼロ)にセットします。
  5. 両方の目で接眼レンズをのぞき込み、視野が一つになるように左右の接眼レンズの幅を自分の両方の目の幅に合わせます。
  6. 粗動ハンドルで、だいたいのピントを合わせます。
  7. 微動ハンドルでピントを合わせます。
  8. 左の接眼レンズの視度調節リングを回して、ピントを合わせます。
  9. 開口絞りレバーで、光の明るさを(少し暗めに)調整します。
  10. レボルバーを回して、高倍率の対物レンズに換えます。
  11. 微動ハンドルを回転させて、ピントを合わせます。この時、ピントが合わなければ、もう一度左の接眼レンズの視度調節リングを回して、ピントを合わせます。
  12. 高倍率になると暗くなるので、開口絞りレバーを少し開き、入ってくる光の量を多くします。

照明にも気を配ろう
 
生物顕微鏡の観察も、実体顕微鏡と同じように、光の使い方が重要なポイントだよ!光の強さと、開口絞りの使い方を色々変えて、いちばん効果的に見えるように工夫しよう。

観察を記録しよう

  • 観察ノート
    生物の色、形、大きさを書いておこう
  • スケッチ
    道具:ケント紙・堅めの鉛筆
    ※細かく、かつ明瞭な線で描こう。デッサンのように、何本もの線で輪郭を書かない。
    ※全体の輪郭を描き、そのあとで細かな各部分を描くと、不恰好になりにくいよ。
    ※図の中に引き出し線を引き、各部分の名称や特徴を書き込んでおこう。
  • 写真
    顕微鏡で観察した生物の姿を写真に撮ることができれば、より正確な記録として残すことがでます。しかし、顕微鏡写真は、顕微鏡の使い方だけでなく、写真撮影についても高い技術が必要なので、簡単ではありません。簡単に、比較的きれいな写真を撮影したいのならば…
    道具例1:ビデオカメラ・ビデオプリンター
    道具例2:テレビカメラ(CCDカメラ)・モニター・ビデオプリンター
    道具例3:デジタルカメラ・パソコン
    手順:プランクトンをシャーレなどに入れ、カメラをそれにできるだけ近づける。
    最近では、接写撮影用の特殊なレンズもあるので、それを使えばより効果的。
プランクトン1 プランクトン2 プランクトン3
顕微鏡で見た様々なプランクトン

もう少し研究してみよう

  • 本の紹介
    「ちいさなプランクトンの大きな世界」たくさんのふしぎ 小田部家邦著 福音館書店 1996年
    「海と人間 ジュニアのための海洋学」 佐々木忠義編 岩波ジュニア新書 1981年
    「海になにが起こっているか」 関 文威・小池 勲編 岩波ジュニア新書 1991年
  • プランクトンを調べるための図鑑など
    「日本海洋プランクトン図鑑 第3版」 山路 勇著 保育者 1984年
    「日本産海洋プランクトン検索図説」 千原光雄・村野正昭編 東海大学出版会 1997年
    「日本産淡水プランクトン検索図説」 水野寿彦・高橋永治編 東海大学出版会 1991年
  • ビデオの紹介
    「深海生物クラゲ」 パイオニアLDC 1996年
    「坂田 明 ミジンコの世界」 テレコムスタッフ 1996年
    「中村征夫 東京湾」 パイオニアLDC 1994年

プランクトンネットを作ってみよう

 プランクトンネットは、専門の理科学用品店でないとなかなか手に入りませんし、入ったとしてもとても高価(安いものでも一つが2万円位します)です。ですから、身近にある、目の細かいものを探して代用してみましょう。

写真1
写真1
写真2
写真2

「百均型プランクトンネット」(原価105円)

<作り方はこうだよ>
 ・ 材料と道具を準備しよう
    糸くず取りネット
   フィルムケース
   カッターナイフ
 ・ 作り方
  1. 百円均一ショップで,洗濯機の糸くず取りネットを買う。
  2. ネットの先端を切り落とし,穴を開ける。(写真1)
  3. フィルムケースの蓋を外周を残して切り取り,リングとする。
   (写真1)
  4. リングでネットにケースをくっ付けて、できあがり。(写真2)

<ここは注意しよう>

  • 洗濯機の糸くず取りネットは、なるべく目の細かいもの(上図は最大目合い0.3mm)を選ぼう。
  • せっかくネットにかかったプランクトンを逃さないように、フィルムケースをネットにつける際、 隙間ができないようにしっかり、取り付けよう。
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