カニのこども(幼生)を観察しよう 〜カニの変態〜
カニの親子は似ていない!
卵からかえったばかりのカニの子どもはゾエアといい、親とは全く違った形をしています。卵ばかりではなく、生活も親とは異なり、浮遊生活をしています。このように親とは形や生活のしかたが違う時期のものを幼生といいます。カニの幼生は脱皮を繰り返すことによって、ゾエア⇒メガローパ⇒稚ガニ(成体と同じ形)という経過を経て、成体となります。特にゾエアからメガローパになること、メガローパから稚ガニになることを変態といいます。
実験材料・道具
■ カニの飼育に必要なもの
海水・水槽または透明な容器・えさ(煮干や魚の切り身など)
■ 幼生の飼育に必要なもの
海水・1リットル程度のビン・熱帯魚用えさ(例えばテトラコンディショニングフード)
乳鉢・乳棒・5ccのピペット
■ 観察に必要なもの
生物顕微鏡・ピンセット
カバーガラス、ホールガラス(50枚2800円、問い合わせ先:井内盛栄堂、電話0120-700-875)
※ホールグラスは、スライドグラスの真ん中が窪んでいるものです。窪みに試料を入れれば、カバーグラスの重みで試料が潰れることがありません。ホールガラスがなければスライドガラスで充分です。
やり方はこうだよ
写真1 シンジョウガニの雄
写真2 シンジョウガニの雌
写真3 卵を抱えているベニツケガニの雄
@ カニを採集する
- 多くのカニが産卵する夏に磯でカニを採集します。
- カニは岩の割れ目や石の下に住んでいるので、石をひっくり返して探してみましょう。
- 石の裏には他にも沢山の生物がいるので、石をひっくり返した後は、元に戻しましょう。
- カニをつかまえる時は、カニの後ろから甲羅の両側を手ではさみます。こうすると、カニにはさみではさまれる心配がありません。
- カニをひっくり返してみて、腹部が細長いものが雄、幅広いものが雌です。腹部に黒っぽい卵を抱えている雌を採集します。(
写真3)
- 飼育用の海水をポリタンクに一杯程度持って帰ります。
A 卵を観察する
- カニを裏返し、ピンセットで卵を数個つまみます。
- 卵をホールガラスの上におき、水を一滴たらし、カバーガラスをかけます。
- 顕微鏡で観察します。かえりそうな卵は、ゾエアの形ができあがり,ぴくぴくと動いています。
B 卵をかえす
- かえりそうな卵を持つカニを海水に入れた水槽で飼います。水槽がない場合には、小さなカニでは、1リットル位の透明容器に海水を8文目入れたものを準備します。
※餌は煮干や魚の切り身を与えます。多くやり過ぎないように注意します。
※糞があればピペットですくって掃除します。食べ残しの餌も水槽から取り出します。
※カニが休む石は特に必要ありません。
- 水槽を暗い部屋に置いておき、電気をつけてみましょう。この刺激で卵がかえることがあります。
- 卵がかえったら、親ガニを水槽から取り除き、幼生だけを飼育します。
- 幼生をピペットでとり、ホールグラスの上におき、カバーガラスをかけて、顕微鏡で観察してみましょう。
C ゾエアを飼育する
ゾエアの飼育に挑戦してみましょう。少し難しいですよ。
- 餌はクロレラ・ワムシ・ブラインシュリンプなどのプランクトンがよいのですが、手に入れることができない場合は、テトラコンディショニングフード(フレーク状の魚のえさ。熱帯魚屋さんに売っています。)を乳鉢で細かくすりつぶしたものを少量与えます。
- 飼育をはじめるときは、水位をビンにマジックで記しておきます。海水が蒸発して水面が下がってきたら、印の位置まで水を足します。
- ビンの底に溜まった脱皮殻や糞をピペットですくい、掃除します。
◆ここは注意しよう◆
親ガニと幼生とを一つの水槽で飼うと、親ガニが幼生を食べてしまいます。幼生がかえったら、親ガニを別の水槽に移しましょう。
もう少し研究してみよう
- いろいろなカニの卵をかえして、ゾエアの形の違いを観察してみましょう。
- 川に住むサワガニの卵からはどんな形の子がかえるでしょう?
- ゾエアが脱皮するたびに、体はどう変化するでしょうか?
- ゾエアがいる水槽の横から、懐中電灯で光を当ててみましょう。幼生はどの方向に泳ぐでしょうか?
- 夏にプランクトンを採集すると、様々なゾエアを採ることができます。いろいろなゾエアを採集してみましょう。
|