エル・ニーニョ現象を体験しよう
〜水槽でエル・ニーニョ現象を再現してみよう〜
エル・ニーニョって何?
エル・ニーニョ現象は、何らかの理由で(理由は明らかになっていません)、偏東風が弱まり、それによって数千キロメートル以上にわたって、海面水温が数年に一度大規模に上昇する現象で、海水と大気の循環が関係しあって、世界各地に高温や低温、多雨や小雨など異常気象を引き起こします。
エル・ニーニョの語源は、エル・ニーニョ現象が起こる熱帯太平洋の中部から東部,ペルー沖にかけての漁師たちが、毎年クリスマスの頃に海面水温が高くなるので、スペイン語で神の子(=イエスキリスト)の意味でエル・ニーニョと呼んでいたのが始まりです。ですから、逆に、同じ海域で海面水温が平年より低い状態が継続する現象はラ・ニ−ニャ現象(スペイン語でエル・ニーニョ=男の子に対して、ラ・ニーニャ=女の子)と呼ばれています。
観測がすすむにつれて、毎年起こる小規模で局地的なものだけでなく、太平洋全域にわたっていることがわかり、どちらの現象も世界各地の異常気象との関係が指摘されています。
では、このエルニーニョ現象は、どうやって起こるのでしょうか?実験で見てみよう。
必要な道具
長方形の水槽(12×60×4cm)、水槽のふた
自動車用クリーナー、真水、牛乳
やりかたはこうだよ
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図1 エルニーニョを体験できる水槽
牛乳を水で薄めます⇒牛乳は下層になります。
⇒これが「低温の深層水」のかわりです。
- 水槽に入れます。
- 水槽に真水を入れます⇒真水は上層になります。
⇒これが「高温の表層水」のかわりです。
- 水槽のふたをしめます。
- 水面が落ち着くまでしばらく置いておきます。これが、赤道大平洋の水温分布のモデルです。 (図1)
- 水槽のふたの片側に自動車用クリーナーを固定して、一番上の空間を空洞と見立てて、水面に風を吹かせます⇒「貿易風」のかわり
- 風を吹かせたときの牛乳と真水の動きを観察しましょう。
◆ここは注意しよう◆
- 水面を落ち着かせる時間を短縮するには、真水を静かに入れよう。
- 水槽のふたは、自動車用クリーナーを固定した、もう一方の片側は完全に閉めないで、空気が出入りできるように、開けておこう。
どうなったかな
図2 風が吹くと…(通常時)
図3 風を止めると…(エルニーニョのとき)
図4 強い風が吹くと…(ラニャーニャのとき)
風が吹くと…水面を覆っていた真水(表層の暖水)が、風によって西側に集められる。
風を止めると…西側に溜まった真水(表層の暖水)がもとの状態にもどる。
つまり、通常は、偏東風によって、西側に溜まっている暖水のかたまりが、何らかの理由で風が弱まってしまうエル・ニーニョのときは、暖水が東側、つまりペルー側に張り出してしまうのです。
通常、赤道太平洋上には貿易風とよばれる東風が吹いていて、暖水が西部に吹き寄せられ、表層に厚く分布しています(図2)。このため、海面水温は西部で高く、東部で低くなっています。
エルニーニョのときは、貿易風が弱まると同時に、表層の暖水が太平洋の中央部から東部に広がります(図3)。
その結果、中央部から東部の海面水温が上昇し、海面水温がもっとも高い領域が、道太平洋西部から中央部へ移ります。暖水域の上では上昇気流が生じ、大気の対流活動が活発で、雲がさかんに発生します。対流活動が活発な領域は通常西部にありますが、エルニーニョのときには中央部へと移ります。
赤道域の活発な対流活動で上昇した空気は中緯度で下降しますが、上昇域(低気圧)が移動すると下降域(高気圧)も移動します。
もうすこし研究してみよう
- エル・ニーニョとは逆の現象であるラ・ニーニャ現象の時は、どういうメカニズムか考えてみよう。
- エル・ニーニョが起こると、海の生き物たちにはどんな影響があるか、本やインターネットで調べてみよう。
- エル・ニーニョは遠く離れた日本にも、影響を及ぼすのでしょうか?夏と冬にどんな傾向があるのか、調べてみよう。
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