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ウニの発生を観察しよう 〜生命の誕生に立ち会う〜

始まりはたった一つの受精卵

 私たちヒトのように雄と雌がいる生物は、たった一つの受精卵(卵と精子とが合わさったもの)から生まれます。受精卵は、分裂を繰り返し、細胞の数を増やします。そして、いろいろな組織や器官を作ることで複雑な体ができ、やがて子どもを作ることができるまでに成長します。この過程を発生といいます。

実験材料・道具

ろ過海水をつくるのに必要なもの
海水・脱脂綿・ロート・1リットルのビーカーまたはビン
0.5M(モル)塩化カリウム水溶液を作るのに必要なもの
塩化カリウム(500g500円程度)・蒸留水(なければ水道水)・はかり
薬包紙(なければアルミ箔を5cm角に切ったもの)・薬さじ・ガラス棒
100ccのメスシリンダー・100ccのビーカーまたはビン
■ ウニの解剖、発生実験に必要なもの
ウニ・200-300ccのビン(ウニがのる大きさの口のもの)5個程度
ハサミ・ラジオペンチ(またはペンチ)・軍手・直径15cm程度のシャーレ数個
5ccのピペット5本程度
■ 観察に必要なもの
生物顕微鏡・ホールガラス(またはスライドガラス)・カバーガラス
※ホールグラスについては、「カニのこども(幼生)を観察しよう〜カニの変態〜」を参照して下さい。

やり方はこうだよ

いろいろなウニガンガゼ
ガンガゼ
サンショウウニ
サンショウウニ
ナガウニ
ナガウニ
ムラサキウニ
ムラサキウニ
ラッパウニ
ラッパウニ

 

口器周辺を切り取る作業 (4)−2

口器を引っ張り出す
作業 (4)−3

体液を捨てる
作業 (4)−4

卵/精子を取り出す
作業 (4)−6・7

(1)ウニを採集する

  1. ウニは、磯の割れ目や石の下に住んでいます。
  2. 潮がよくひく大潮の日に採集しましょう。
  3. ウニのとげがささらないように軍手をはめ、同じ種類のウニを10個程度採集します 。
    ※ 自然保護のため、とり過ぎないように。
    ※ ひっくり返した石はもとにもどしておきましょう。
    ※ ウニの採集が禁止されている海岸があります。
    ※ ガンガゼはとげがもろく、一度刺さるとぬけにくいので触らないようにしましょう。
    発生実験に適したウニ
    生息地域

    産卵期

    バフンウニ 本州-九州 冬-春
    エゾバフンウニ 北海道-東北 春-秋
    コシダカウニ 関東以南
    ムラサキウニ 本州中部-九州
    ラッパウニ 関東以南
    アカウニ 本州-九州

    詳しくは、千原・村野編「日本産海洋プランクトン検索図説」1322ページを参照して下さい。

  4. 採集したウニは、海水で湿らせた新聞紙にくるんで持ち帰ります。暑いときには、クーラーボックスに入れて運びます。
  5. 実験に使うための海水をポリタンクに一杯程度持ち帰ります。暑いときには、クーラーボックスに入れて運びます。

(2)ろ過海水を作ります

  1. ロートの中に固く丸めた脱脂綿を押し込みます。
  2. ロートを1リットルのビーカーに立て、手で押さえます。
  3. ロートに海水を静かに注ぎます。ビーカーに溜まった海水を実験に使います。

(3)0.5M(モル)塩化カリウム水溶液 を作ります

  1. 薬包紙を三角に折り、開いたものをはかりの上にのせます。
  2. 塩化カリウム少量を薬さじにとり、薬包紙の上にのせ、3.7gをはかりとります。
  3. はかった塩化カリウムを100ccメスシリンダーに入れます。
  4. 100ccのメモリまで蒸留水をメスシリンダーに入れます。
  5. ガラス棒でよくかきまぜます。

(4)卵子と精子をとる

  1. ウニを水道水で洗います。
  2. ウニを裏返すと、真中にアリストテレスの提灯と呼ばれる口器があります。その口器の横にハサミの片刃を差し込み、その周辺を切り取ります。
    ※ ウニを扱うときは軍手をしましょう。
  3. 口器をラジオペンチでつかみ、引っ張り出します。
  4. 口器をとった穴から体液を捨てます。
  5. 200-300ccのビンにろ過海水を口まで満たします。
  6. ウニを口器をとった方を上にして、海水に触れるようにビンに乗せます。
  7. 0.5M塩化カリウム水溶液を1ccピペットでウニの口器を取り除いた孔に入れます。この刺激で卵(らん)、もしくは精子がウニから出ます。精子の場合、白い濁りが海水中に拡がり、なかなか沈みません。
  8. 精子は、すぐにピペットでシャーレに移します。
  9. ハサミ・ラジオペンチは、ウニを解剖するたびに水道水で洗います。これは、雄を解剖したときに、それらに着いた精子を殺し、解剖中の受精を避けるためです。

(5)受精させ、発生を観察する

  1. シャーレに3分の2程度、ろ過海水を入れます。
  2. 卵を少量(0.3〜0.5cc)ピペットですくい、シャーレに入れます。卵はばらばらになったものを入れ、固まったものやねばねばしたところは入れないようにします。
    ※ 多く入れ過ぎないように注意しましょう。
  3. 精子を少量(0.3〜0.5cc)ピペットですくい、卵を入れたシャーレに移します。
    ※ 多く入れ過ぎないように注意しましょう。
    これで受精します。
  4. ピペットでシャーレから海水を少量とり、ホールガラスに海水を一滴のせます。カバーガラスをかけ、顕微鏡で観察します。
  5. 時間を追って発生の進み具合を観察しよう。水温によって発生の進み方は違ってきます。
    水温22〜24度で発生させたサンショウウニの時間例
    2細胞期
    1時間13分
    4細胞期
    1時間42分
    8細胞期
    2時間3分
    16細胞期
    2時間18分
    桑実胚期
    3時間59分
    胞胚期
    5時間17分
    原腸胚期
    19時間15分
    プリズム型幼生
    23時間49分
    プルテウス幼生
    36時間55分

 

 

ウニの発生      
受精卵と未受精卵 2細胞期 4細胞期 8細胞期
受精卵と未受精卵
2細胞期
4細胞期
8細胞期
16細胞期 32細胞期 桑実胚期 胞胚期
16細胞期
32細胞期
桑実胚期
胞胚期
原腸胚期 プリズム幼生 2本腕のプルテウス幼生 4本腕のプルテウス幼生
原腸胚期
プリズム幼生
2本腕のプルテウス幼生
4本腕のプルテウス幼生

◆ここは注意しよう◆

  • 生物保護のため、同じ種類のウニを採りすぎないようにしましょう。ウニの雌雄は外見からでは簡単に見分けることができませんが、10個程度採れば、たいていの場合雌雄両方含まれています。また、石をひっくり返してウニを採集したときは、石を元に戻しておきましょう。
  • ウニの採集が禁止されている海岸があります。このような場所では、採集をしないか、事前に地元の漁業協同組合に相談しましょう。
  • ガンガゼにはさわらないようにしましょう。ガンガゼの刺ははもろいため、いったん刺さると抜けにくくなります。また、折れたトゲからは毒がでます。刺さったら、すぐに抜きます。抜くのが難しい場合やたくさん刺さった場合は、病院で抜いてもらった方が無難です。
  • ラッパウニにもさわらないようにしましょう。先がラッパ状になったトゲから毒がでます。ラッパウニをさわるときには、必ず軍手をしましょう。海の危険な生物とその対処方法については、小林照幸著「海洋危険生物」を参照して下さい。

もう少し研究してみよう

  • 未受精卵や精子も観察してみよう。未受精卵と受精卵とではどうちがうでしょうか。
  • うすめた台所用洗剤を発生が始まったウニのいる海水中に入れてみましょう。ウニの発生にはどのような違いが見られるでしょうか?
  • また、洗剤を標準使用量(洗剤の容器に書いてあります)の10倍、100倍に薄めるなど、濃度を変えて実験してみましょう。

参考文献

  • 千原光雄・村野正昭、1997.日本産海洋プランクトン検索図説.東海大学出版会、45,000円(税別).
  • 小林照幸、2002. 海洋危険生物. 文春文庫、文芸春秋社、720円(税別)
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