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エル・ニーニョのときは冷夏?
〜赤道上の海面水温と日本の天候の関係を調べよう〜

エル・ニーニョと天気の関係

 「エル・ニーニョ現象を体験しよう 〜水槽でエル・ニーニョ現象を再現してみよう〜」で見た、エルニーニョによる赤道太平洋の海面水温の変化は、地球全体の気圧の分布に影響を与えます。日々の天気の変化が、気圧の変化と密接に関係していることから想像できるように、地球全体の気圧の分布が変化するということは、世界中のあちらこちらで天気が変化するということです。エルニーニョは数ヶ月以上持続しますので、あるまとまった期間の気温や風、降水といった天気の状態、すなわち、天候が変化するのです。 
 そこで、夏の天候を代表する量として気温をとりあげ,日本の夏の気温とエル・ニーニョとに,どんな関係があるか調べてみましょう。

やり方はこうだよ

  エル・ニーニョのときには,太平洋東部赤道域の海面水温が上昇します。北緯4度から南緯4度,西経150度から90度の海域はNINO3(ニーニョ・スリー)と呼ばれ,気象庁はNINO3の月平均海面水温を用いてエル・ニーニョを定義しています。1950年から2001年までNINO3の月平均海面水温データの表を付録に載せました。このデータを用いて,エル・ニーニョが発生した時期や持続期間、強さを調べてみましょう。

  1. NINO3の月平均海面水温()を月別に1961年から1990年までの30年分平均して、
    1月〜12月それぞれについて基準値()を求めます。
  2. つぎにからを差し引いて各月の海面水温の基準値からのずれ、すなわち
    月平均海面水温偏差()を求めます。
  3. グラフ用紙の横軸に時間の目盛(月単位)、縦軸に温度の目盛を付けて、をプロットし、隣り合う月の間を直線で結びます。このようにデータを時間軸に沿って並べたものを時系列と呼びます。
  4. の時系列から数ヶ月以上持続する変動を抽出するために、着目した月()の値とその前後2ヶ月の値(計5ヶ月分)の平均値を求めます。
    着目する月を1ヶ月ずつ進めながら、この平均値をつぎつぎに計算したものを5ヶ月移動平均値と呼びます。の時系列をプロットしましょう。
  5. 気象庁は「NINO3の月平均海面水温偏差の5ヶ月移動平均値()が6ヶ月以上連続して+0.5℃以上になった」場合をエル・ニーニョと定義しています。この定義を満たす期間を時系列上にマークしましょう。偏差の大きさがエル・ニーニョの強さに、マークした期間の長さがエル・ニーニョの持続期間に相当します。

 以上の計算や作図は、電卓と定規があればできますが、パソコンの表計算ソフトを使うと、とても簡単にできます(図1)。

図1 表計算ソフトを使った計算・作図の例

 つぎに,日本各地の,たとえば皆さんが住んでいる地方の月別気温のデータを入手して,夏の気温が過去にどんな変化をしていたかを調べ,エル・ニーニョとの間にどんな関係があるかを調べてみましょう。月別気温のデータは,気象庁のホームページから入手できます(詳しくは付録参照)。

  1. 興味のある都市の月別気温のデータを入手します。
  2. 7月の月平均気温偏差を計算して時系列をプロットします。
  3. さきほどのBの時系列と異なり、横軸の時間のメモリは年単位で付けます。
  4. NINO3の7月のをAの7月の月平均気温偏差の時系列に重ねてプロットします。
 別のグラフ用紙で、横軸にNINO3の7月のの目盛を、縦軸に7月の月平均気温偏差の目盛を付けて,7月のデータをすべてプロットしましょう。

観察・考察のポイント

  • エル・ニーニョの特徴を調べてみよう。
    1.エル・ニーニョの発生間隔と持続期間の平均値はどれくらいですか?
    2.発生間隔や持続期間に年代による違いはありますか?
    3.エル・ニーニョの強さに年代による違いはありますか?
  • NINO3の海面水温偏差と気温偏差の関係は単純ではないかもしれません。
    日本の夏の天候を決める要因がエル・ニーニョだけではないとすれば,関係が一目瞭然ではないことも予想されます。その場合には,たとえばエル・ニーニョのときに気温が平年(基準値)より高い年と低い年の割合を調べるなど,各自工夫してエル・ニーニョと夏の気温の関係(の傾向)を考察しましょう。
    海洋や大気の変動のメカニズムは様々な要素が関わる複雑なものです。したがって,簡単な「法則」(例えば「エル・ニーニョのときは冷夏である」)が完全に成り立つとは限りません。簡単な法則に従わない「例外」の発見が,現象のさらなる理解につながることも多いのです。何らかの「法則」を見つけたら,その法則に合わない「例外」にも注意して考察しましょう。
  • NINO3の月平均海面水温偏差の5ヶ月移動平均値が,6ヶ月以上連続して-0.5℃以下になった」場合がラ・ニーニャです。ラ・ニーニャのときには,通常に比べ,熱帯太平洋東部の海面水温は低くなり,西部への暖水の蓄積も顕著で,西部での大気の対流活動はより活発になります。ラ・ニーニャのときに日本の夏の気温がどういう傾向にあるかも調べてみましょう。

もう少し研究してみよう

 エル・ニーニョと夏の気温の関係に,地域差がないか調べてみましょう。太平洋側と日本海側,東日本と西日本,あるいは東北地方と中国地方など,いろいろな分類で比較してみましょう。また,天候に関する気温以外の要素(降水量や日照時間など)とエル・ニーニョの関係も調べてみましょう。さらに,エル・ニーニョと冬の天候の関係も調べてみましょう。

関連HP

付録1 データの入手先

付録2 NINO3の月平均海面水温(℃)

 付録2(PDF形式)

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